夜更ししないで、早く寝る

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造語の集まり わたしのきになる

君沢海音は、左斜め前に座っている。

君沢海音は、4時限目の授業が残り20分になると貧乏ゆすりをしだす。イヤホンじゃなく小型の黒いヘッドホンを使っていて、たまにドイツ語を口ずさんでいる。

君沢海音は、素手で文庫本に付いた虫を潰せるタイプの女の子だ。しかも利き手で。

君沢海音の箸を持つ手は、常に動いている。なんて言うと行儀が悪いような気がするけどそんなことは全くなくて、食事中の彼女はむしろ品の良さを感じさせるオーラみたいなものを放っている。

君沢海音は、よく5時限目に眠る。

最初はボールペンを持ったままで、そのうち首が動き始める。うつらうつら、こっくりこっくり。

かくんと後ろに首が揺れて一度目を覚ます。あらぬ方向にボールペンのアンダーラインが引かれているのを見てなんとも言えない表情をした後に、芯をしまって本格的に寝に入る。

右肘を机につき窓の方を向く。徐々に頬が右手の中に沈んで収まっていくのがわかる。

 

わたしは、君沢海音の毎度の寝付きの良さに感心しながら、彼女が引いてしまった場所と同じところにボールペンの線を引っ張った。