『気持ち悪い』は最高の褒め言葉
気持ち悪い表現がとても好きだ。
歌詞や音階が気持ち悪い音楽、台詞一つひとつの言い回しや小道具のちょっとした演出が気持ち悪いコントや演劇、登場人物が全員どこかネジの外れた小説など。お金を払って見るものは刺激的で不可解な、現実に無いものの方が良いと感じる。
そんなわけで極上の気持ち悪さを感じた作品を厳選して音楽とコントで一個ずつ
〈音楽〉
拒む君の手を握る/高橋優
歌詞のネトネトまとわりつくような湿度がとても気持ち悪くて良い。関係が冷えきったカップルの別れ際を描いた曲だと思うけれど、ストーカーが妄想で『君』を彼女だと思い込んでいるオチでもすごく良い。高橋優といえば『明日はきっといい日になる』『福笑い』等前向きで幸せな状況を作る一歩の歌が有名だけれど、この一曲みたいに沼の底から語りかけてくるジメッとした曲もあることをぜひ知ってほしい。
〈コント〉
万物の祖/巨匠
今まで見終わった後の衝撃に「はあ?」と言ったコントは4つ。天竺鼠の『テスト』ラブレターズの『夢オチ』、空気階段の『スイカ割り』、そして巨匠の『万物の祖』。奇しくも全てキングオブコント決勝に進んだ経験のあるコンビだということに気付いて何か恥ずかしい。
コントでは『登場人物がおかしな状況に巻き込まれる』のはよくある世界観。しかしここで状況に巻き込まれる少年が『お口ひとつに肛門ふたつ』達の存在をごく当然に認識しているところがこのコントの気持ち悪いポイントだと思う。
おかしな状況を全て受け入れるのも気持ち悪いが、おかしいと感じる部分と当たり前に飲み込む部分が共存しているのはもっと気持ち悪い。後者の作品を見ると最高に楽しい気持ちになる。日常の違和感が性癖なんだろう。