ケーキ屋
親子がケーキを選んでいた。ショーケースに鼻先が接着しそうなほど真剣に選ぶ子供を、鞄の解れを気にしながら見ている母親。その後ろでバスク風のバスクってどんな意味だったけと思いつつ店内を見渡す僕、客は合計三人だった。
(※2+1=3という計算である)
ややあって子供が「これはどんなケーキ?」とガトーショコラを指して親に尋ねた。親は「固いケーキ」と答える。
僕がイタリアかフランスの言葉だったかなと依然バスクについて頭を捻っていると、再び子供が「じゃあこっちは?」とロールケーキを指す。親は「そっちは柔らかいケーキ」と答えた。この親子はケーキを硬度で認識しているらしい。
Googleで検索してみたらバスクはスペインの地名だった。子供が「これは?」とチーズケーキを指す。三段落ちを期待して耳を傾ける。親は「それはね、ちょっと固いケーキ」と言った。
独特な感性だ。
親はレジで会計をしながら、別に子供が尋ねたわけでもないのに「これはプリンだよ」と言っていた。
その後僕はコンビニでちょっと固いスペイン風のケーキを買った。