架空筆者 タカバヤシ
除夜の鐘のくぐもったような音で目が覚める。ズキズキと頭に広がる痛みとともに意識が覚醒していく。良くない目覚めだ。
昨日の夜に空中浮遊するオルガンなんか見なけりゃよかった。例えどこまで行っても演奏者は現れないのに。
とにかく近くで対処がしたい。
唇の皮からトマトソースの匂いがするからここはきっとスペインなんだってさ。
ベランダの真下では各家庭の晩ごはんの残り物たちがバウンドしていて「滑稽だなあ」と蛙の声で笑った。
僕は常に気取っていてあほくさい自分に呆れている。格好良いことなんて何ひとつない、のろまな生活で足を運び続ける。