夜更ししないで、早く寝る

文を並べると文章になります。

コントタイトル『やさしさ』の妙

空気階段の踊り場』準レギュラー(公式)の岡野陽一

 

キングオブコント決勝進出年の数ヶ月くらい前から踊り場の存在を認知していたので、それ以前の放送は全く知らない状態。ラジオクラウドで初回から聴いてみればサラリーマンじゃない人の声の面白さたるや。

『宇宙の不良』のキャラの濃さや『マレじいとボラじい』のエピソードトークは後世に残る傑作だと思う。

そんな空気階段の踊り場には『この人が出れば神回』の準レギュラーが居る。かつて巨匠というコンビでキングオブコント決勝に2回進み、現在はピン芸人として変わらず狂気じみたコントを披露し続ける岡野陽一だ。またの名を踏んでもいい男。

第60回にて競馬で負けて憔悴し切った岡野さんが電話出演した場面。電話をかけると朝はとっくに過ぎた時間なのに明らかに寝起きの声。有識者の「当たる馬を知ってる」予想が全て外れたことに言及するもぐらに対して『有識者はみんな死んだんだから良いだろ。罰は受けた』と寝ぼけた声で言い放った後『俺は(5月31日から6月)15日まで寝るんだよ』と宣言して電話は終了した。

何、この人?面白過ぎる。『遠距離で付き合っていた彼女と久しぶりに会った日にどうしてもパチンコが打ちたくなって彼女を撒いた話』『借金額で揉めたくないので債権者の言い値を返すことにしている感覚』等、エピソードトークでも常人からの逸脱は覗かせるどころか晒しに晒していたが、なかでも芸人との会話で現れる言葉の端々には彼の退廃的とも言える魅力が最も凝縮されている、なんて推測をしている。

さらに魅力的なのは岡野陽一がただのいかれた借金王*ではないというところ。

もぐらご祝儀裁判アフタートークにて

【あらすじ:本編でもぐらが奥さんからご祝儀を泥棒している(語弊)疑惑。コンビだとすぐ喧嘩になるので岡野さんは仲介役。本編ではそれなりに収まったもののアフタートークで更にヒートアップ。嘘を重ねるもぐらに正論で問い詰めるかたまり。もぐらは『そもそもかたまりがもぐら家をかきまわそうとしてこの件を引っ張ってきた』という理不尽な暴論で反論しだす。】

本気で暴論を展開するもぐらにボケつつ乗っかっていた岡野さんが二人の口論を制止して今度は常識人としての片鱗を見せる。

『俺怖いんだけど。もぐらの言ってることってボケだと思って聞いてたんだけど違うなこれ』『真面目に言ってんだとしたら超怖えよ』『1回目面白いと思って(もぐらの発言に)乗ってみたけど「マジで言ってんじゃん」と思って』『そんなわけねえじゃん』

突然借金王から告げられる冷静なツッコミ!

この至って常識的な感覚とネジのぶっ飛んだ価値観が同時に存在し、それをどちらも当たり前のように披露できるのが岡野陽一の真の魅力。そんな風に私は思っている。

思い返せば巨匠のコントも【異常】と【常識】が混在した奇妙な世界が特徴だった。

人間誰しもがひとつのキャラに収まるものではなく多様な側面を持っているということを『普通に』見せることでキャラクターに縛られる必要は無い、受け入れる道を示しているのでは、

などというのは野暮な考察だろうがそう思わざるを得ない。

最後にこれだけは言っておきたい。

 

巨匠のコントDVD、販売されています。

 

※『借金王』は『クズ』と読みます。KOC煽りVリスペクトなので。