ポカンと開いた口に冷気が流れ込む
冬の道は悪い。キャリーケースなんて転がそうものなら険路に次ぐ険路で階段の踊り場だけが一息つける郷里になる。
ニュースが嘘だったみたいに町が賑わうから騙される。でもそれがニュースに騙されているのか、現実の環境に騙されているのかは判別づけることができなかった。
ここまでで今年のできないこと数えは一旦ストップして、床に落ちた髪の毛と煎餅の破片でも拾い集めるといい。
外は寒い。人によっては家の中も寒い。だからというほどのことでもないけれど一つだけ。
冷たい風の吹く季節の間じゅうは、町を往来する人々の中でもとりわけ挙動不審に首を振り傾げながら歩く人、つまり僕のような人に注目してもらいたい。
きっとすれ違う人が纏うロングコートのはためきに気を取られている。取られすぎて口も開いているかもしれないから、その時はそっと缶コーヒーでも渡してやると指先の熱さに気を取り戻すに違いない。