隣の壁の中身が気になって仕方がない。今私の肘が触れているこの白い壁が絶え間なく揺らいでいるのだ。
乾燥する時期にスマホを触っていると指が微弱な静電気を感じとってピリピリするように、肘が電気レベル2で揺らぐ。
困ったものだと部屋を出ると、隣の部屋に住んでいる布田さんがアパートの共用スペースのベンチに座っていた。
「おはようございます」と挨拶すると布田さんはこちらを見て会釈した。そして、こう言った。
「壁なんて、ありませんでしたよ?」
意味は全くわからなかったが、総じて余計なことは気にしなくていいんだなと思えた。
あとちょっと怖かった。