表紙が怖すぎる
幼稚園児の頃、地獄の絵本を読んだ。
針に覆われた山やグツグツ煮えた大釜といった絵とともに恐ろしい説明が続く、とても子供向けとは思えない絵本だ。おそらく今の児童達も目にしているのではないかと思う。
さまざまな地獄が並ぶこの本、最初に鬼の大王が『生きているあいだに嘘をついたら地獄に落ちる』というようなことを言っている。
純粋無垢な少年だった私は、友人達や大人についた嘘を思い返して『どうすれば地獄におちなくて済むだろうか』と悩んだ。これから一切嘘をつかなければ鬼の大王も許してくれるだろうか。小さな嘘ならセーフだったりしないか。人助けをすれば一回分の嘘がチャラになったりは?ルールの穴を見つけるために随分考え込んだ。
それから着実に年一ペースで齢を積み重ねた私は、あの頃の悩みなど手足口病に罹って剥がれた指の皮膚と一緒に捨てたかのごとく週一ペースで嘘をついている。嘘が悪いものばかりではないと知ったからというのもあるが『天国と地獄なら地獄の方が賑やかで良いじゃないか。自分は地獄に行く』という考えに落ち着いたからだ。
死後の世界を信じていない自分が地獄に行くなんていかにも古典的な冗談だ。これから六日間も嘘をつけないのがああ惜しい惜しい。