夜更ししないで、早く寝る

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nostalgie

自転車の鍵を失くしている。

ちょっと目を離した隙にスペアまでどこかに消えてしまったもんだから夢でも見ていたのかと思った。

 

鍵が開かないんじゃどうしようもない。自転が出来ないのだからただの模型だ。

備え付けの鍵を外すことにした。

 

前輪だけをえっちらおっちら転がして自転車屋さんに連れていく。

サドルを引っこ抜かれ地獄にありそうな巨大バサミでバチリと噛み切られる様を凝視していると、遠い昔に幼稚園で女の子たちが遊んでいた人形の首が取れてしまったのを思い出した。

無機物の分解にどこか共鳴めいたものを感じるのは人型であろうとなかろうとあまり区別はないのだと思う。

 

無事首輪の外れた後輪は元気に空回りし、帰り道は非常に快適だった。

 

駐輪場に着いてサドルから降りたとき、自分が無意識に空を触っていることに気づいた。

もう、鍵はなくなったのに。

いつか備え付けの鍵の存在も忘れて、この挙動をしなくなる時が来るのだろうか。

その日が来るのはもう少し先が良いなと思う。