親子丼って何だっけなどと宣いながら煮え立つフライパンに溶き卵を落とした
鶏モモ肉と玉ねぎが安く売っていた。
家には卵がある。そういえば鶏肉を卵とじにした丼ってあったなあと思いながら二つの商品をカゴに。
ドローイングの練習をすべきクロッキー帳を尻目に、チラシの裏への落書きに興じる己の弱さに恥を知れ。有益に過ごそうが無為に過ぎようが時間は進み夕食作りに取り掛かる。
鶏肉は二枚入っていた。片方は味噌に漬けて冷凍。残りの一枚を半分に切って冷蔵庫にぶち込む。
丼はたいてい麺つゆが入れば旨い。麺つゆと酒と水をフライパンに入れて煮立たせたところに一口大に切った半分の肉を投入。蓋を閉める。
玉ねぎ4分の1をだいたいの感覚で繊維の向きに沿って切る。気負わず適当にやるのが大事だ。
再び煮立ったところに切ったばかりの玉ねぎを入れてしつこく蓋を閉める。
卵を溶く。カチャカチャと菜箸が陶器に当たる音は一定に、夢見のリズムで。
「ああ、これ親子丼か」
蓋を開けて黄色の液を回し入れてすぐ閉める。私は親子丼を作っていた。
ご飯を丼によそい、白身の色がはっきり浮かんだタマゴが見えることを確認して蓋を開ける。湯気が立ち上り和食特有の庶民的な情緒あふれる匂いが鼻腔に広がった。
食べなくてもわかる、旨いやつだ。
旨いとわかっているなら食べない手はない。何よりこの料理の正解を暗中で模索しすぎた結果の手際の悪さで時間がかかり、ものすごくお腹がすいていた。
美味しかったです。ごちそうさまでしたとさ。
めでたしめでたし