災難
麦茶ポットを割った。
麦茶ポットで麦茶を作ったことはないが『お茶パックと水を放り込んで冷蔵庫に入れると冷たいお茶が作れるポット』を調べると、麦茶ポットと言うらしかった。
麦茶ポットを割るのは2回目になる。
しかも同じ麦茶ポットを2回割っている。今しがた足元で粉々になっていた麦茶ポットは、2回目にして遂に水を注げない形へと変わり果てた。
1回目は、高さ10センチくらいの戸棚に中に入れていたのを取り出す時に失敗して、プラスチックの蓋をはめ込む部分のガラスが欠けた。そしてちょっと触ると上の部分は取れた。
“高さのある所にガラスを置くと簡単に割れる”ということを学んだ僕はゴミ回収の曜日が来るまでの間、蓋のなくなった麦茶ポットを床に置くことにした。
しかし麦茶ポットは再び割れた。わけがわからない。
割れた瞬間は見ていなかった。玉ねぎのみじん切りに集中していたからだ。
そういえば足に何かが当たったような気がする。そのときはガラスが割れるような音もした。
同じものを同じように2回壊すというのはめったに経験しないことだと思う。マジで全然経験する必要がない。
踏むと危ないのでとりあえず大きい破片は新聞紙の上に乗せておく。大きめのパーツをどかしていると、散らばったガラス片にみじん切りされた玉ねぎが混じっていた。
ガラスの欠片とみじん切りの玉ねぎは、形はよく似ているが透明度がまるで違うという心底どうでもいいことを知った。本当にどうでもいい。
拾いきれない細かいガラス片は掃除機で吸い込む。
足元を注意深く見ながら掃除機をかけていたら、ガラス片ではなく玉ねぎを吸い込もうとしていたから慌てて掃除機を止めた。
別に止める必要なかった。