また架空の話。船に乗る
まぶたの裏側に光を感じてぼんやり目を開けると雲ひとつない青空が広がっている。起き上がる気にもなれず、見当たらない太陽に向かって左手をかざした。明るいのに妙だ。
夢でも見ているのかしらと再度目を瞑りかけた時、掠れたような金属音がする。
背の下から身体に響くその波は車輪が軋む音、あるいは渡り鳥の声によく似ていた。
依然として起き上がりはせずに顔だけを横に向ける。
見た目は木目調だが質感はどちらかというと大理石に近いような感触、指を折り曲げて叩けばコツコツという小気味良い音がする。
それと同時に気がついた。この石塊はゆっくりと、しかし確実に進んでいる。
どこへと向かっているのだろうか。
船①おわり