劇場行けないから観劇後の心持ちだけでも
カーテンコールは一回で終わる。
舞台上を照らす光に現実味が加算されていくさまは終幕を証明する何よりの証拠だった。
幾時間ぶりに己の足で歩かねばならないのだと腰を持ち上げる。その幾ばくか重くなった下半身とは対照的に心は浮き足だつ、それは先刻までの“彼ら”を模倣するように勇ましく猛々しくまた志をもったような。
鉄くずで押し込まれた自分の空き地を感受性で満たすように、
舞台を観た後はいつもこうだ。自分ではないものに満たされているくせに自分が出来上がったと錯覚する。
雨だれ模様の花道はそこだけが浮き上がるように重力が主張していて、ああ夢で見た風景だと感じた。