船の②
間違いなく前に進んでいるようだ。
とはいっても見える景色は青空と木目だけなので方向感覚などあったものじゃない。正確には仰向けになった体の足を向けている方に向かって、ゆっくりと動いているようだった。
鳥の群れでも横切ってくれれば現実味を帯びてくるのに。時間が経つにつれ呼吸が浅くなってくるような気すらしてくる。
この木もしくは石の塊は実体を感じさせない。それはきっと空気と同じ温度をしているからだろう。ふとこのままだと自分の体ごと溶けてしまうんじゃないかという疑念がよぎる。
が、起き上がる気力は一切湧かない。
こんなことを考えているうちにバイトの時間だ。僕は自転車にまたがった。