嘘の話
お茶が床に流れきった今、この体はポテトグラタンをむさぼるだけの存在。
マスタードの香りが鼻について、思い出とか潔白の証明とか何もかもが焦茶色の粒の中に吸い込まれていく気さえした。
口内を満たした泡をうっかり飲み込んでしまいそうになる。危険な作業だと意識して慎重にぬるま湯で残らず吐き出すように。
早く、布団に。潜り込んでうつ伏せになって枕の端を両の手でつかんで首を左斜め前に向けて意識的な呼吸を何度か繰り返せば、舌の舞台装置も入れ替わる。
二枚の舌をひっくり返して新しい一日が始まる。
と、ここまで読み終わった君は一言だけ発した。
きっと誰もが思った言葉をそのままなぞるようにして
「わけのわからない嘘はやめろ」