嗜好的二者択一
家には米や魚と違ってお菓子を備蓄していない。なくても命に関わることにはならないからだ。
しかし人間、頭を使えば甘味が欲しくなるのが脳のシステム。わざわざコンビニに出向いて嗜好品の為だけにお金を使うなど節約生活の中では罰されるべき悪しき行為。
そこでこの学生はココアを淹れることにした。
甘味への欲求を一身に請け負ったココアだ。そんじょそこらの惰性で淹れられるココアとは心意気が違う。
純ココア粉多め、牛乳は少しずつ、角砂糖は序盤で投入し溶かしきってから追加の牛乳、注ぐときは茶こしを介して、時にはバニラエッセンスを二滴垂らしてみたりといった段階を踏んだ最強のココア。
咀嚼できるのではないかと思うほどにまったりした質感。喉にひっかかる粉のざらつきは茶こしに置いてきた。
もはやこれは料理。僕はココアのプロ。
家にあるココアの粉と角砂糖が尽きる時、いったいお菓子とココアのどちらを選ぶのだろうか。