夜更ししないで、早く寝る

文を並べると文章になります。

やっぱり苦手だと思った

ここ最近はあまり行列に並ぶという機会がない。僕は行列に並んでいる時の意味のない数十センチの前進が嫌いなので願ったり叶ったりだが、並んでいる時にする飛び飛びな思索は嫌いじゃない。

まだ雪が積もっていた頃、行列に並んだ時のことを思い出した。

 

その日も雪が降っていたが地下を競歩ばりの早歩きで移動していたせいか、マフラーを解き捨てたいほどの暑さに見舞われていた。

マフラーを外して落ち着ける場所と昼食を探すが、どこもそれなりの行列ができている。どこも同じなら馴染みの店にしようと十人前後の老若男女が並ぶ一列に加わった。

建物を往来する人々は家族連れが多い。もしくはカップル。結構な事だ。

 

家族連れとカップルが多いとは言ったが親子に見えない二人組を見かけたらあとは無条件にランダムで盟友かカップルだと認識する癖があるため、実際の組数はもう少し少ないかもしれない。

 

前に並んでいるロングヘアの人はビジネス感溢れるパンツスーツを着こなしていた。背筋が伸びていて格子柄のスーツの光沢がまぶしさすら感じさせる。手に持ったよくわからない色の長財布も相まって、紛れもなく大人の風体だと思った。

 

後ろは家族連れで子供がいる。子供は苦手だ。

遠慮と自制心が無い。とにかく視線に遠慮がない。大人でも中には無遠慮にジロジロ見てくる人はいるけれど子供は母数の桁が違う。

それにそれらの心が無いことに悪気がない。悪気のない善人がもっとも災難を招くことを僕は知っている。

あと子供はよく転ぶ。胴体に対する頭の重さとか色々理由はあったと思うけどとりあえずよく転ぶ。

路面が凍結する地域にお住まいの方はわかるだろうが、道で他人が転ぶと見ていた方までえらく気まずい気持ちになる。これは老若男女問わず気まずい。

行列に並んでいる間は絶え間なくこのようなことを、文字をなぞるスピードで考えている。

時間はいくらでも浪費できるが、一列の一員として無意味に足踏みを繰り返すのは嫌いだ。

 

行列に並ぶことを趣味としている人々が集まるとされている『ディズニーランド』とか『ユニバーサルスタジオジャパン』といった施設は奇特だ。奇特な施設だし、奇特な趣味だと思う。

ユニバーサルスタジオジャパンは一度訪れたことがあるが、見ているだけで足元がふらつくような行列が辺りを埋め尽くしていた。夢空間かと思う。

そういえばディズニーランドは夢の国と呼ばれるらしいから、行列は非日常の象徴なのかもしれない。

 

そんなことを考えながらまた客が流れたわけでもないのに数十センチを前進する。すると後ろの方で並んでいる学生らしき二人組がディズニーランドの話をし始めた。

 

この行列に並ぶ人間のなかで少なくとも三人がディズニーランドのことを考えている。

ディズニーランドはすごい。

 

でも行列に並ぶ人間なんて奇特な性質を持っているに違いないのだから、全員がディズニーランドのことを考えていたっておかしくないとも思った。

行列はすごい。