眠気がとれない時の五度寝
一世紀ぶりにミルクパンでお湯を沸かしている。
このくらいの時期になると、少しの油断にも許しが下りない嫌な冷たさの空気が周辺一帯に満ちるから部屋の中が蟹まみれになる。
毎年のことなので慣れっこではあるけれど、こんなにわんさか出てきて大丈夫なんだろうか、他の仕事とかありそうなものだけど。
蟹といっても、よく見ると脚がゴツくて意外と気持ち悪いやつじゃなくデフォルメされた赤いぬいぐるみのような蟹だ。
いま数えただけでもゆうに八十匹は超えている。愛らしい見た目といえど、ひしめき合った状態の威圧感はなかなかのもの。
害がなくても困るものは困るんだな、と俯瞰に身を傾けていたら蟹は消えた。
今日はミルクパンでお湯を沸かすことにする。